DMは治験薬の効果を統計的に検証できる状態にデータのクリーニングを行います
治験では、実施施設(病院)で医師が被験者に投与した治験薬の有効性と安全性をデータで評価を行い、厚生労働省に承認申請を行います。
しかし、医師から集められたデータは、被験者に問診中に集めた情報で、データとしては不足している部分もあれば、誤りもありますし、医師によって言葉の「揺らぎ」があるため、統計をとって解析できるような状態ではありません。
そこで活躍するのが、治験の円滑な実施に欠かせないDM(データマネジメント)です。
DMは、@験者に関する症例報告書(CRF)のデータ入力、A不足しているデータの洗い出しや記入ミスの指摘や訂正、Bミスがあった場合に治験依頼者(製薬企業)やCRA(治験モニター)に連絡を行うなど、治験薬の効果が統計的に検証できるようにデータの洗練を行います。
また、治験薬だけでなく、厚生労働省から承認が下りて間もない新薬の全症例の解析を行い、データ作成の基礎をつくることもDMの重要なお仕事です。具体的には、新薬を使用している全国の医療機関から送られてくる調査票を調べ、治験段階では発見されなかった副作用やその前兆がないかどうかをチェックしていきます。
調査票はデータベース化されるため、機械的に異常値をはじき出すことは簡単に行えます。しかし、臨床検査の数値は個人差があるため、異常を100%見つけ出すことはできません。そこで臨床経験のある看護師が多く活躍しているDMの目が必要となってくるのです。
つまり、臨床現場から集められた生のデータから、これまでは見つからなかった事象を発見し、投薬の際に予め副作用を予測できるように、使用状況症例を調べていくのです。
いずれの症例にも違いがあるため、実際に病院で患者さんに向き合っているような感覚を得ることができるのも、看護師の経験がある方にとっては仕事の醍醐味といえるでしょう。
以前はDMのほとんどが、医師が記載した症例報告書(CRF)で集められたアナログな情報をデータ化していましたが、現在は医師が直接データを入力してネット経由で情報を得るスタイルが増え、全体の半分近くを占めるようになりました。
このスタイルをEDC(電子的症例情報収集システム)と言いますが、IT化が進むとともに、単純作業の部分はどんどん削られ、DMに求められることも変化してきました。これからは効率よくデータを収集し、解析できるデータにしていくための構造を考えたり、医師が入力する画面を作業性のいい画面デザインを考え、他社との差別化を図る姿勢が必要となるでしょう。
このように書くとITスキルが心配になる方もいらっしゃると思いますが、入社時はワード(できればエクセルも)が扱える程度で十分で、その他の知識は入社後の研修等で十分に対応できます。
主にデータを扱う仕事ですが、製薬企業との折衝をはじめ、CRA(治験モニター)、統計解析部門など、医薬品に関してコミュニケーションを密にとることが求められるため、他の治験関連のお仕事と同様に、看護師の経験を活かして、DMに転職される方が増えています。
製薬企業は治験に関するコスト削減やスピードアップの必要性から治験関連業務をCRO(受託臨床試験機関)にアウトソーシングしています。したがって、DMとして働く場合は、CROに勤務することになります。